Health 2.0 2011 Spring Fling in S.D レポート

1.はじめに


 ASCRS(The American Society of Cataract and Refractive Surgery)の開催がSan Diegoだったこともあり、2011年3月21日-22日にかけてHilton La Jolla Torrey Pines, La Jolla, CAで開催されたHealth2.0に参加してきました。規模感としては、1プログラムにつき参加者250名程度。公式ウェブサイトからのAttendees Listによると本プログラムへの参加は316名、当学会開始からの累計は1042名。中規模の部屋に立ち見が出来る程度に盛況な様子でした。


 Health2.0の今年のメインテーマとしては、“治療から予防へ”をコンセプトに、簡易検査デバイス医療機関ネットワークへの双方向の情報アクセス構築、患者コミュニティ、ヘルシーな食と生活の情報提供・啓蒙、参加型アプリケーションといった要素が強く、一方で、バーティカル検索エンジンや、医薬品データベース等のより医療としての専門性が高い分野との連携に関しては、今回はプレゼンテーション、Exhibitionともに見かけませんでした。会の特徴として、公式ウェブサイト(参加者用ログインページ含む)、ブログ、ニュースサイト、ソーシャルメディアTwitter / Facebook)、参加前後のメール配信等を通じた情報発信、ネットワーキングに積極的であるあたりはさすがといったところでしょうか。


 スタートアップの投資案件に関しても、具体的な話を聞いたのはSolo HealthがCoinstar社から資金調達に成功したといったニュースくらいで、Palo Alto周辺で開かれるカンファレンスのメンツに比べると、マネタイズに苦戦している印象があります。日本の某大手キャリアの方々も、日本でのto C向けの医療事業パートナーを探しにいらっしゃってましたが、あまりクリティカルに事業ドメインがマッチしている対象がなかなか見当たらないみたいでした。EMRやPHRの概念などは、カイザーなどの医療サイドからのプレイヤーと、MSやGoogleのお膝元ということもあり、日本よりも先行しています。


参加企業、サービスは、大別すると、医療従者者、医療機関向けプロフェッショナルサービスと、患者向けのヘルスケア情報提供、啓蒙、各種サービス提供に区分できます。図はコンシューマーが、健全な状態から、疾患に罹り、医療機関への来院・治療、そしてその成果を共有するまでのヘルスケアのバリューチェーンを図示化したものです。基本的にHealth2.0に関わるプレイヤーは複合的なレイヤーに関わることが多いため、以下の図はプロダクト/サービスをメインとしたマッピングを重視しています。



それにしても、参加しているメンバーの面々を見ると、Health2.0を標榜している企業といえど、1日のほとんどの時間をネットやシステム開発に費やして、ファストフードが好きそうな人たちが多く参加しており、このあたりは米国はそもそも抜本的な食生活や生活習慣を改善しないことには、予防のためのシステムやサービスをいくら使っても構造的な問題解決にはならないように思います 笑 


2.Health2.0 2011 in S.D 協賛・参加企業、サービス一覧


以下に協賛、参加企業、サービスの一覧をざっとまとめてみました。


a) Unity Medical:簡易アセスメントツールや専門家への質問ツールなど、医療情報技術を通じた医療従事者、医療機関、患者を繋げるソリューションを開発・提供している。Smart Assesment Tool, Wonder Bar, Journey Logなどのプロダクトを提供。製品紹介に関しては、以下のサイトの動画がわかりやすい。
http://unitymedical.com/products/


Unity Medical offers a suite of patent-pending digital communication tools that focus on connecting people and information in new ways that increase patient safety, reduce healthcare costs, and improve quality of care. Our goal to provide “knowledge transfer” technologies across the continuum of care that enhance the patient experience and reduce the overall burden on the healthcare system.
http://unitymedical.com/


b) California Healthcare Foundations:オークランド、カリフォルニアをベースとする慈善的な助成金提供団体。約700億の寄付から毎年40億程度の補助金を拠出している。
http://www.chcf.org/


c) Kaiser Permanente:米国内でもトップクラスの規模と実績を誇る病院チェーン(Integrated managed care consortium)であり、870万ドルの医療保険加入者、167,300人の従業員、14,600人の医師、35のメディカルセンターと431のメディカルオフィスを擁している。
https://www.kaiserpermanente.org/


d) Athena Health:診療管理、診療報酬支払い、EHR、患者コミュニケーションツールなどをクラウドベースで提供している。
http://www.athenahealth.com/


e) Eliza:医療・ヘルスケアに関する各種プログラムとともに、双方向デザインや分析、コンサルティングを提供。電話を通じてコンピューターと人間が会話するためのspeech recognition engine等も開発。
http://www.elizacorporation.com/index.php


f) Humetrix:医療ITソリューションカンパニー。EHRを交換するためのMobile Health Information Exchange & Blue Button Solutions、セキュアなEHR情報のやり取りのためのUSBを活用したU-BeWell、スマートフォン向けの患者アプリケーションの開発、提供を行っている。
http://www.humetrix.com/


g) Mad*Pow:医療機関向けのウェブサイト、スマートフォンアプリ、デザイン制作業務などを受託している。クリーブランドクリニックと共同でLet's Move it!”というiPhone, Android向けのアプリも開発している。
http://www.madpow.com/Home.aspx


h) Solo Health:高血圧や体重、眼のセルフチェックが出来る“ヘルスケアキオスク”事業の展開を行っている。高血圧や体重、眼のセルフチェックが出来る。ビジネスモデルとしては、ローカルドクター、設置場所の調剤薬局やhigh-traffic retail stores、広告主からの課金が主になっている。CEO兼ファウンダーはBart Foster。2010年夏にNIHから120万ドルの寄付を受託。Coinstar Incからの投資を受けている
http://www.solohealth.com/


Coinstar Inc. is branching out beyond Redbox DVD rentals and coin-counting machines and sees a future in self-serve machines that can let people know if they have high-blood pressure or vision problems. Bellevue-based Coinstar is investing an undisclosed amount of money in Atlanta-based SoloHealth.

SoloHealth is developing self-serve kiosks that will screen a person’s vision, blood pressure, weight and body mass index. It also are designed to give users a database of local doctors.

SoloHealth says it plans to put its kiosks in high-traffic retail stores and expects to generate revenue from advertising.
In the summer of 2010, the company received a $1.2 million grant from the National Institutes of Health.



下記は、実際のデモ機を使用した際に登録したメールアドレスまで送られてくるVision Testの結果サンプル(実際に、学会中に体験し、メール受信したもの)




i) West Wireless Health Institute:非営利の研究・リサーチインスティチュート。サンディエゴを拠点としている。
http://www.westwirelesshealth.org/


j) Calit2:正式名称はCalifornia Institute for Telecommunications and Information Technology。情報通信、ITをベースとして様々な分野での研究、教育などを行っている。NTTやSONYなどの日本企業とのパートナーシップも実施。
http://www.calit2.net/


k) Sermo:115,000人の医師が参加するコミュニティサービスを運営。参加は医師限定となっており、質問の投稿とそれに対する回答がレビューできる。
http://www.sermo.com/


l) Freelance MD:医療従事者向けのコミュニティサイト。キャリア、ファイナンス、起業情報などを提供。
http://freelancemd.com/


m) Mobi Health News:ニュースポータルサイト。医療、ヘルスケアセクターのモバイル技術の採用を推進している。
http://mobihealthnews.com/


n) Wireless Health Strategies:Wireless HealthとmHealth(Mobile Health)の推進をコンセプトにネットワーキング、イベント、出版、ファンディングなどを行っている。
http://www.wirelesshealthstrategies.com/


o) keas:患者が行動変容するためのコミュニティ+情報提供サービス。従業員の健康管理、疾病コスト管理ツールとして、法人向けのパッケージ提供を行っている。※ログイン不可のため、実際のサービス詳細は確認できず。
https://www.keas.com/


3.会場参加者からのつぶやき


以下、会場参加者からのヒアリング結果です。


<ボランディアで参加する姉妹がMayo Clinicで働く女性の話>

・ EHRを完全にウェブに移行できているのはカイザーくらいである。MayoもGoogleと連携しているがまだ完全には出来ていない。
・ MicrosoftGoogleもいったんデータを自分で入力するステップが課題となっており、完全に移行できていない。
・ Microsoftの開発者も先日家族が病院にかかることになり、データ入力をいちいちすることの手間を実感していたようである。


医療機関向けにウェブサイト制作、アプリ制作等を支援するMad*Powの担当者の話>

・ 米国では、ウェブサイト制作やデザイン業務だけでなく、医療機関がアプリを独自に開発するニーズが高まっており、そのサポートを行っている。(⇒日本では通常、メーカーや製薬企業が提供するツールやマテリアルを使用するに留まっているが、空港などでも独自アプリを通じて情報を提供しているくらいなので、今後病院などでは固定的な院内情報の提供のみならず、出勤医師や順番待ち、院内の出店店舗等のリアルタイムの情報提供の可能性が考えられる。特にツイッターのようなマイクロブログツールの組み込みも検討できると面白いのでは(yammerの導入とフィード取得やツイッターハッシュタグ使用など)


<某医療系アプリ開発者の話>

・ 現在、iTunesで15万ダウンロードでまずまずの成果となっている。米国では、まずはiTunes向けのアプリ制作を行い、その後アンドロイド向けに着手する流れになっており、こちらもリリース寸前。


4. 関連リンク

Health2.0 公式サイト 
http://www.health2con.com/


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http://www.health2news.com/


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http://www.health2news.com/2011/03/21/the-absolute-latest/


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